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kintone開発を丸ごとAIに託す――ノベルワークス「レクシンAI」が実現する要件定義から実装の一気通貫

株式会社ノベルワークス

kintone開発を丸ごとAIに託す――ノベルワークス「レクシンAI」が実現する要件定義から実装の一気通貫

株式会社ノベルワークス 代表 満村 聡 氏

kintone開発の最前線で10年を走り続けてきたノベルワークス代表の満村 聡 氏は、ある確信を持っている。「インターネットやスマートフォンがこれまで社会を変えてきたが、AIはそれを凌駕する」。

同社が2025年5月にリリースしたkintone特化AI「レクシンAI」は、自社のシステム開発ノウハウをAIに移植し、kintone向けの開発を、要件定義から実装までワンストップで支援するプロダクトだ。2026年4月には設計ドキュメントから動くシステムを自動生成する実装機能を搭載し、完成形に近づいた。開発という作業をAIに委ね、人間はより本質的な価値提供に集中する――満村氏が描くSIの未来像を聞いた。

テクノロジーの力で、人間を人間の仕事に還す

金融系システムのSEとして約15年、フルスクラッチの開発現場を歩いてきた満村氏には、長年抱えてきた違和感があった。「テクノロジーを扱う側の人間ですら、かなりアナログなことを山ほどやっている」。ライブラリもない環境でコードを書きながら、開発の現場だけでなく、子どもが通う学校や地域社会にも無駄が溢れていると感じていた。

その経験が、2015年の創業につながる。「無駄をテクノロジーで省くことができれば、人間にしかできない価値ある仕事にフルコミットできるはずだ」。情熱、真心、思いやり――AIがどれだけ進化しても、人間だけが持ち得るこれらの力こそが本来の提供価値になる。満村氏はそう考え、1人で会社を立ち上げた。

現在、ノベルワークスは従業員約30名。kintone開発を軸に、AI事業、DX人材育成、地方創生の3事業を展開する。大阪府八尾市をはじめとする複数の自治体において、DX支援や地域事業者のデジタル化支援の実績を持つ。顧客層の中心は中小企業で、業種の偏りはない。製造業から建設業まで幅広い業種に対応できるノウハウが強みだ。

インタビューに答える満村氏

「神が降臨した」――kintoneとの出会いとSIの再定義

転機はkintoneとの出会いだった。フルスクラッチでしかシステムを作れなかった世界に、ローコードプラットフォームが現れた。「神が降臨したと思った」と満村氏は振り返る。マウス操作でUIを組み立てられ、システムに詳しくない人でも視覚的にイメージが湧く。この技術とクラウドを組み合わせれば、顧客にダイレクトに価値あるシステムを届けられると直感した。

満村氏が同時に感じていたのは、従来のSIが提供してきたシステムの「過剰さ」である。何もかもスクラッチで作り込む開発は、顧客にとって必ずしも必要なものではなかった。kintoneを通じて「顧客に十分なシステム」を作る――この発想の転換が、ノベルワークスの事業の原点となった。

kintoneの普及は、SIerの役割そのものも変えた。「高度なシステムを作り上げる設計能力よりも、このシステムを入れることでお客様にどんな価値を提供できるかを考える時間ができた」と満村氏は語る。開発の複雑さから解放されたことで、SIerの視線は技術から顧客の業務課題へと移っていった。

レクシンAIは、その変化の延長線上に生まれた。人が提供してきたSIのサービスを、プロダクトとして直接届ける。「私たちの仕事が人じゃないとできない仕事じゃないんだよと、世界に知らしめたかった」。満村氏がレクシンAIに込めたのは、自社のSI事業そのものを形にするという意志だった。

「作ってくれへんのかい」――ユーザーの声が導いた実装機能

レクシンAIは2025年5月にローンチした。当初は要件定義を中心とした上流工程の支援に特化していた。kintoneでどんなアプリを作るべきか、必要な拡張機能は何か、データベースの設計はどうあるべきか――そうした問いにAIが答え、設計ドキュメントを生成する。いちいち検索して調べなくてもレクシンAIに聞けば分かる、という体験を提供してきた。

しかしリリースから1年、見えてきた課題があった。「レクシンAIは設計の提案までは出してくれる。でもお客様は最後に『で、作ってくれへんのかい』となる」(満村氏)。どれだけ精緻なドキュメントを示しても、動くものがない以上、それが本当に正しいのか判断できない。「いいねんけど、その後って?」――多くのユーザーがそこで立ち止まっていた。

2026年4月、レクシンAIは大型アップデートを実施した。それまで生成してきた設計ドキュメントをもとに、実際に動くkintoneアプリケーションを自動生成し、カスタマイズコードのデプロイまで一気に完結する実装機能の搭載である。要件定義から実装まで、ワンストップでAIが支援する体制が整った。

すでに同業のkintoneコンサルタントの間では、レクシンAIを実務に組み込む動きが出ている。商談の内容をレクシンAIに入力し、出力された提案をそのまま顧客に提示して受注に成功した事例もある。「SIの一部はもう人間がするものではないと思っている。同業の方にも使ってほしい」と満村氏は語る。月額5万円で利用でき、開発人材がいなくてもドメイン知識を持つ担当者がいれば運用できる。

レクシンAIについて語る満村氏

汎用AIでは届かない「kintoneならこう作る」という専門知識

kintoneでシステムを作りたいと考えたとき、ChatGPTに相談するユーザーは少なくない。満村氏もその実態を把握している。ただ「それっぽい答えは返ってくるが、本当に正しいのか分からないというところで止まってしまう人がほとんどだ」。汎用的な生成AIはデータベース設計の一般論には強いが、kintone固有の作法やベストプラクティスまではカバーしきれない。

レクシンAIが汎用AIと違うのは、そのアーキテクチャにある。生成AIの出力をプロンプトで制御するだけでなく、kintoneの開発ナレッジを「知識」として事前に与える設計を採用した。ノベルワークスが10年の実務で蓄積してきたkintone固有の開発ノウハウを、ナレッジデータベースとして構築。生成AIの回答はこれを活用して出力されるため、「kintoneならこう作る」というニッチな提案が可能になる。この仕組みは特許を取得済みだ。

たとえば顧客管理や営業支援のシステムを設計する場合、必要なアプリの大枠は汎用AIでも提示できる。しかしレクシンAIは、ユーザーが自社の業種やサービス内容を入力すると、その情報を踏まえたフィールド設計まで踏み込んでくる。「一般的な案件管理が持つ項目に加えて、業種のオリジナリティが入ったフィールドが散りばめられる。そこが一番大きな違いだ」(満村氏)。

ユーザー自身がナレッジを追加できる機能も備わっている。自社独自の業務フローや設計思想をレクシンAIに蓄積すれば、使い込むほど自社に合った提案が出てくるようになる。汎用AIが「誰にでもそれなりの答え」を返すのに対し、レクシンAIは「この会社にとっての正解」に近づいていく。

開発を手放した先に――AIと共に進化するSIerの未来

レクシンAIが実装まで担えるようになったことで、SIerの仕事はどう変わるのか。満村氏は迷いなく答える。「アプリを作るとかプログラミングをするとか、そこはもはやただの作業だ。我々はお客様の業務の成功、その先にある経営の成功まで踏み込んだITコンサルタントにトランスフォームしていく必要がある」。

手応えもある。2025年、ノベルワークスに寄せられるAIを組み込んだシステム開発の相談は前年比で20%増えた。同社自身も変化の渦中にある。「この1年で私たちも変わってきた。次のステージにいかなくてはいけない」(満村氏)。コーディングではなく、経験と知識を総動員して価値を提供する「上流工程」への進化。それは同社だけでなく、SI業界全体に突きつけられた問いでもある。

満村氏の視線はさらに先を向いている。自治体や専門学校と連携し、地域の事業者にDXを推進する力を直接届ける「面の支援」の構想だ。レクシンAIを通じてエンドユーザー自身がDXの入り口を自ら切り拓ける世界を、地域丸ごとつくっていきたいと語る。

ビジネスモデルにも新しい挑戦がある。従来の「開発対価」ではなく、売上向上やコスト削減といった成果に対して報酬を受け取る成果報酬型の開発に踏み出した。顧客とリスクを共に背負う「運命共同体」の関係を築く。「お客様を絶対に成功させるという覚悟がなければできない」と満村氏は言う。その自信の裏付けにあるのは、レクシンAIと10年分の開発実績である。

満村 聡 氏